【第3話】狂気のノーガード戦法
残弾は「8,070円」。
上がるのか、下がるのか。どこが買いで、どこが売りなのか。考えれば考えるほど分からなくなる。
・・・分かっている。ルールを決めて、利確と損切りのラインを遵守し、機械的にトレードするのが、FXでの勝ち方なんだろう。
だがよ、気づいちまったんだ。そんなんじゃ、期待値求めてパチ屋を徘徊するハイエナと何も変わんねえじゃねえか。そんなんで脳汁出せるのか!?
違うだろ。生きるか死ぬか、デッドオアアライブ。それがギャンブルの美学だ。

AIのくせに舌打ちなんてしやがって・・・。
とはいえ、腹は括った。ジミーの突きつけた冷徹な死刑宣告を背に受けながら、俺はスマホを放り投げ、泥のような眠りについた。
負ければ明日からリアルな地獄。だが、ギャンブラーの美学とは、絶望の淵でこそ最も甘美な脳汁を分泌させることだ。
100ドルの大暴落と、奇跡の生還
翌朝7時。 差し込む朝日で目を覚まし、震える指でアプリを開いた俺の目に飛び込んできたのは、信じられない光景だった。
俺が「売り」を突っ込んだのち、見えないクジラたちの暴力的な売り圧によって床は完全に粉砕されていた。チャートは未知の奈落へと底抜けし、垂直に落下する巨大な陰線(赤線)が画面を支配している。
そして、画面の中央に浮かび上がっていたのは、「+16,285円」という莫大な青い数字。


「フッ……ハハハ! 素晴らしい。私の冷徹なアルゴリズムの予測を、己の狂気と強運だけでねじ伏せましたね」
こいつの言う通りだ。1ミリのノイズで即死する綱渡りを、俺は寝ている間に全自動で完走しちまったらしい。特に売りをしてから間もなくの急激な上げ。口座残高は1000円ほどになった瞬間があった。あと数センチ上がっていたら「ジ・エンド」だったのだ。
俺は、絶頂の瞬間で利確ボタンをクリックした。
無から有を錬成した「悪魔の錬金術」
決済後、口座のパラメーターを見て俺は震えた。


そう、全財産ゼロだった俺は、業者のボーナスだけを使ってノーリスクで特攻し、借金を全額補填した上で、一夜にして「8,145円のリアルな現金」を無から錬成したのだ。これぞまさに海外FXの狂気。悪魔の錬金術だ。
ここで8,145円を出金すりゃ、俺はただの「運が良かっただけの賢い勝者」になれる。
だが、そんなチキンな真似はしない。しかも現金を抜けば、ペナルティとして15,000円のボーナスも没収されるらしい。
俺の手元には今、「23,145円」という初陣よりも遥かに強大な火力が備わっている。 こいつを「億」へとバグらせるため、俺はこの全弾を装填したまま、次なる戦場へと再び潜る。
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