【第2話】死神の鎌
絶望の損切り、そして削られた命綱
深夜のニューヨーク市場。
前回の初陣で命の5,000円を溶かした俺は、失った資金を強奪し返すため、昨夜学んだ15分足のチャートと睨み合っていた。
「ここだ、ここを抜けたら一気に吹き上がる!」
画面の中で連続する緑の線に脳髄を焼かれ、俺はたまらず「BUY(買い)」の引き金を引いた。
だが、相場という化け物は、俺の浅はかな欲望など嘲笑うかのように直後から急反転。そのまま俺が設定していた「損切りの盾(S/L)」を容赦なくブチ抜き、約2,000円の出血と共に強制決済の通知が鳴り響いた。

右にある青点がBUYしたところ。右端の赤点が損切ラインに設定したポイントだ。
残高、「8,070円」。無料の弾丸をもう半分も減らしてしまった。俺はPCを叩き割りたくなる衝動を抑え、ジミーにアドバイスを求めた。

結論から申し上げましょう。「今回の敗北は『運が悪かった』のではなく、チャートの形から100%説明できる、極めて典型的な初心者狩り(ダメなエントリー)です」


・・・だそうだ。
頭では理解できるが、あのじりじり動く緑の線を見つめてたら、そう冷静ではいられない。今賭けているのは、わずかな命の金なのだから。
「向いてねえのかな、俺は」
絶望の中で泥のような眠りについた。
翌朝のチャートに映っていた「即死の滝」
翌朝。重い体を起こし、何気なくスマホでMT5(取引アプリ)のチャートを開いた俺は、全身の血の気が引くのを感じた。
そこにあったのは、昨日俺が損切りをさせられた価格から、なんと「約100ドル(1万ピップス)」も垂直に落下し続ける、地獄のフリーフォールだった。


「……もし、あの時『損切り』を設定していなかったら?」
冷徹な相棒、ジミーが淡々と数式を弾き出す。



「0.01ロットで100ドルの逆行……つまり、マイナス約1万5000円。相棒の残弾は8,070円でしたから、滝の半分も落ちないうちに口座は強制決済(ゼロカット)され、今朝起きた時には『残高:0円』という完全なる死を迎えていましたね」
震えた。 俺は負けたんじゃない。
あの忌まわしい「損切り」というシステムのおかげで、確実に来ていた死神の鎌から、首の皮一枚で間一髪逃れ切っていたのだ。神はまだ、この不夜城の支配人を見放していなかった。
谷の底で、俺は再び引き金を引く
負けはした。だが、致命傷は避けた。 ギャンブルの美学とは、いかに期待値を積むかじゃない。この絶望の底から、いかに極上の脳汁を分泌させるかだ。
残弾8,070円。俺は週足レベルの「歴史的な大底」にスコープを合わせ、再び冷徹なスナイパーとして戦場に潜る。
【戦績(合計)】


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