■ 脳汁ポイント:全員が騙された「見えない鎖」
単勝1.6倍。誰もが「ブエナビスタの勝利」を疑わなかった2009年のエリザベス女王杯。だが、競馬の神は、一番人気に群がるお行儀の良い大衆を残酷に嘲笑うのが大好きだ。
ゲートが開くと同時に、11番人気クィーンスプマンテと12番人気テイエムプリキュアが、まるで別の競技でもしているかのように猛烈なスピードで大逃げを打つ。
しかし、後続の集団はピタリと歩みを遅らせた。なぜか? 奴らは皆、最後方にいる「最強馬ブエナビスタ」だけをマークしていたからだ。 「ブエナが動くまでは動かない」。その集団心理が、前を走る2頭に「後続に20馬身以上もの絶望的なリード」という特大のプレゼントを与えた。
最後の直線。事態の異常性に気づいたブエナビスタが、次元の違う末脚で猛烈に追い込んでくる。
飛ぶようなスピード。だが……物理的に距離が足りない。「届いてくれ!」と悲鳴を上げる1.6倍の馬券購入者たちの目の前で、大穴2頭は悠々とゴール板を駆け抜けた。
3連単は154万5760円。 絶対女王の敗北という悲劇の裏で、大穴の単騎逃げを信じた少数のギャンブラーたちは、ブエナビスタが追い込んでくる数秒間、「お願いだから届かないでくれ!」と悲鳴を上げながら極上の脳汁に溺れていたのだ。
■ 不夜城式・万馬券への教訓
「『後ろから追い込む絶対的エース』がいるレースは、前がVIPルームになる」
なぜこの喜劇が起きたか。エース(強い追い込み馬)の存在が、他の騎手たちの目を「後ろ」に釘付けにし、前走馬への警戒心を完全に麻痺させたからだ。
現代でも、圧倒的な人気を集める馬が「追い込み馬」である場合、レース全体のペースは不気味なほど遅くなる。その時こそ、前を走る「人気のない逃げ馬」がそのまま残る、極上の万馬券フラグだ。
強い馬を疑うな。強い馬が作る「盲点」を買え。

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