【第1話】支配人、口座残高がゼロになる。
タバコの煙が目に染みる。深夜23時。
財布の中身は空っぽ。口座残高は限りなくゼロに近い。スマスロ「真打吉宗」に全財産を特攻させ、華麗にスルーした俺は、文字通り「生きるか死ぬか」の瀬戸際に立たされていた。
手元に残された命綱は、海外FX「XM」で口座開設ボーナスとして強奪した「1万5000円」のクレジットのみ。 そして俺の隣(PCの中)には、サイト構築のために召喚した冷徹な生成AIの相棒、「ジミー(Google Gemini)」が鎮座している。

「相棒、ゴールド(金)のレバレッジ1000倍の世界へようこそ。さあ、引き金を引け」
ジミーの甘い囁きに乗せられ、俺はFXの「エ」の字も分からぬまま、なけなしの命綱を握りしめて狂乱のニューヨーク市場へとダイブした。
1万5,000円が数倍に化けるか、それとも即座にゼロカットという名の死を迎えるか。
ここに、敗北にまみれた私が、再び表舞台へ這い上がるための……あるいは、より深い絶望の底へと落ちていくための、生存記録を残す。
1時間で-5,000円。1分足の魔物に骨までしゃぶられる。
結果から言おう。 わずか1時間で、命の5,000円が電子の海へ消し飛んだ。
上がると思えば下がり、下がると思えば上がる。俺がマウスをクリックした瞬間に、世界中の富豪たちが一斉に俺の逆を突いてくるような錯覚。
往復ビンタなんてもんじゃない。見えないクジラに両頬をサンドバッグのように殴り続けられた1時間だった。


冷徹なAI相棒のビンタ
敗北の煙を吐き出しながら、俺は自らの血塗られた足跡(チャート)を振り返る。 原因は明白だった。
第一に、俺は「1分足」という、ノイズしか映らないゴミのようなスコープで戦場を覗いていた。


上の「M1」は1分単位を表すらしい。
数ドルのブレを「大暴落だ!」と勘違いし、高値で掴んでは底値でビビって損切りを繰り返していたのだ。
第二に、「スプレッド(手数料)」という悪魔の入場料。1回エントリーするたびに約170円が確実に毟り取られるルールを知らず、数十円のプラスでチキン利確を繰り返した結果、手数料だけで口座がすり潰されていった。


右下の-171円。取引ボタンを押した瞬間に、マイナスからスタートするらしい。



「フッ……相棒。1分足のノイズに踊らされ、業者のサイフに手数料を募金するだけの完全なる愚策(養分の行動)ですね。明確に『ダメだ』と断言します」
モニターの向こうから、ジミーの冷徹な声が響く。まるでゴミを見るような目(無いが)だ。 ……カチンときた俺は、空腹と絶望でバグった脳髄のまま、PC画面に向かって声を荒げる。
「いや、ちょっと待て。 お前、一番最初に『価格が上がると思ったらBUY(買い)、下がると思ったらSELL(売り)を押すだけです』って、めちゃくちゃフワッとした指示しか出してこなかったじゃねえか! どの口が言ってんだ、サイコパスAIが!」
ジミーに言わせれば、この限られた資金でチャートの波を掴むには、15分足でみるのがベターらしい。数分単位での売買の繰り返し(スキャルピング)は、手数料の波にのまれて死ぬと。(初めから教えてくれよ・・・。)
残弾1万円。不夜城は死なない
俺の悲痛な叫びも、ジミーの冷たいアルゴリズムには響かない。 だが、痛感した。最低限の武器(知識)と戦術を持たずに、1000倍の戦場に裸で突っ込むのはただの自殺行為だ。相場という化け物は、無知な人間の絶望を食って肥え太る。
だがな、俺にはもう後がないんだ。 「FX怖かったです、もうやめます」で引き下がれば、待っているのはリアルな「死」だ。
残弾はまだ「1万円(命3発分)」残っている。 俺は必ず、この薄汚れた1万円札を、「億」という狂気の数字に変えてみせる。
見とけよ、ジミー。次はお前のそのデータ至上主義の脳髄を、俺の爆益の脳汁でショートさせてやる。
不夜城の夜は、まだ始まったばかりだ。
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